どうして書き上げてしまったのか、自らを責め立てたくなる。此処に記されている事は、全く珍しくない話だ。只々、只管に、私の心情を吐露した物である。何の捻りもなく、何の意味も無い。然し、気が付けば筆を執り、言葉を辿っていったら、一冊の本に纏まってしまった。
裏を返せば、海の果てを見つめ続ける情動も、たったこれっぽっちの物量なのだろう。
記さなくても良いものだった。読まれずとも良いものだった。然し、こうして『読む者を待つ存在』にしてしまった。此処に私の矮小さが証明されている。
それでも、矢張り。
私は彼に様々な物を貰った。受け取った。そして未練がましく手離せずにいる。
彼は私の事などを忘れ、広い世界へと羽撃き、未だ見ぬ未来を紡ぎ出すことを祈っている。
此れは私の、一朶の枯四葩を分解し、一つずつ記した物だ。