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 八月になった。母ちゃんが無事格安スマホを使えるようになったので、日々のやり取りに写真が増えた。予め調べておいた料金プランを用紙にまとめたり、携帯ショップの店員さん宛に渡せば分かるようにしたり、手間暇はあったけれどやってよかったと思っている。
 ひと月弱、宿泊施設での暮らしになるのが密かに楽しみだった。食事が変わることもそうだけれど、普通に生活しているだけではなかなかこういう施設に入れないと思っているから、というのが大きい。ホテル形式の宿泊棟があり、宇深とは隣の部屋になった。一年生で利用するのが俺と宇深だけだったので当然と言えば当然だった。県が運営しているところなので、宿泊施設以外にも交流施設も併設されていて、陶芸なんかが体験できるということだった。予約か必要らしいが、自由研究のアテができたのでラッキーだと思えた。
 宿泊施設からバイト先の定食屋まで自転車で十五分ほどだったが、歩けない距離でもなかったので徒歩で通った。自転車を止める所に困るのもあるし、バイト後は例のコミュニティへ行きたかったからだ。
 バイトが少し早く終わったので、初めて一人でコミュニティへと向かう。宇深にもらったパーカーは、私服の中で一番のおしゃれ着だ。年上に見られることは無理だと思うけど、ちゃんと高校生に見えると思う。周辺には怪しい風俗店とか、ラブホテルがあるのは落ち着かないけれど、明るい時間帯ならほとんど閉まっているので人通りも少ない。慣れてきたのもあって、挙動不審にならずに済んでいる。
 
 バーの扉を開ける。カラコロと鳴るベルが心を軽やかにしてくれた。
「こんにちは。マスター居ますか?」
 少し緊張するのは相変わらずだが、前ほどの未知の場所ではなくなっていた。初めは内装に目を向ける余裕が無かったが、最近は店内を観察出来るようになっている。
 入ってすぐ、大きな樽をテーブルとして並べた立ち飲み用スペースがある。海賊の映画に出てきそうな、人が入れそうなほど大きな樽で、メニューが直接貼り付けられている。そのスペースの天井にはスポットライトが三つ付いていて、ライブやショーなんかが行われていても不思議ではない。左右には四人掛けのテーブルがそれぞれ二つあるので、真ん中をステージにしたら小規模な演奏会ができそうな配置だった。
「や、ちー君。一番乗りだよ」
「えっ、そうだったんですか。早すぎました?」
「大丈夫。いつもと同じ席でお願いね。レモン水、出してあげるよ」
「ありがとうございます!」
 奥の席に移動しながら、辺りを見る。樽のスペースの裏側にバーカウンターがあって、カウンター席が五つ。その奥にはボックス席が二つ。階段を降りるとネオン管のフラミンゴが飾られていて、オレンジ色っぽい夕方みたいな光が薄っすらと灯っている。暗くしてあるとそれだけで大人っぽくて、ちょっとドキドキする。こういうところでも、緊張しなくなるのにどれくらいかかるだろう。お酒が飲める二十歳になったとしても、ここ以外の、同じような雰囲気のお店に、気軽に出入りできるようになる自分を想像できない。
 円形の席の奥に座る。一人だけは初めてなので、何となくソワソワとしてしまった。お菓子と飲み物は持参していきて良いと聞いていたので、途中のコンビニでチョコと炭酸水を持ってきた。まだ炭酸水に冷たさが残っていたので、チョコも溶けずに済んだ。
 マスターがやってきて、グラスを二つ持ってきた。どうやら俺とマスターの分みたいだった。細長いグラスに大きな氷。なみなみと注がれたレモン水に、カットされたレモンが入っていて、それだけでおしゃれに見える。
「せっかくだし、二人でちょっとおしゃべりしようよ」
 軽くグラスを合わせて乾杯する。キン、と涼やかな音がして、お酒じゃないのに飲んでいるみたいだった。口に含むと、爽やかなレモンとライムの香りがして、蜂蜜と合わさったなめらかな味が喉を通る。暑い日にぴったりな飲み物で、美味しくておしゃれなんてすごい、と子供っぽいことを言ってしまった。
 俺は学校やバイトでのことを話した。宇深……みーくんとは同じクラスで同じ部活に入っていること。バイトを始めて、少しだけ親孝行できたこと。
 マスターは聞き上手な人だと思った。何でもない話なのに、上手く質問をしてくれて、話が弾む。何となく、詳しい家族構成だとか、いじめられていることは話さないように……と気を付けていた。見ず知らずの人ではないが、特殊なコミュニティの中心である人に自分の全てを握られるのは、何だか怖い。
 確かにそう思っているはずなのに。
「自分の被食願望に気付いたのは、最近だって言ってたね」
 マスターに聞いてもらうと、何でも喋りたくなるような気持ちになる。この人、食べたい側だったなと思いながら。
「良かったら、ちー君のことを教えてくれない?」
 どこまでなら話して大丈夫なのだろう。同じ方向を向いている人たちとはいえ、自分のプライベートに関わることだ。なるべく言葉を選びながら、口を開く。
 自身の被食願望が目覚めたきっかけに少しだけ触れた。学校で……というか、今までの人生でほとんどずっといじめられてきたこと。今でもいじめられていること。自分の皮膚を蟻に食べられたことをきっかけに、宇深と意気投合したこと。
「みーくんは、……大事な友達だと思ってます。あんまり俺に友達が居ないので、分からないこともあるんですけどね」
 マスターは頷きながら、「みーくんも理解がありそうだよね」と笑う。何となく、友達を褒めてもらえるのは嬉しい。ここに連れてきてくれた狙いは分からないままだけど、悩んでいることを想像してくれたのかも、と思う。
「じゃあ、彼は色々相談できる相手なんだ?」
「そう……だと思います。無口なんで、言葉は少ないんですけど」
 食う、ということに関して色々と思うことはある。蟻や蜘蛛に食べられることと、宇深に体液を食われることは全くのイコールではない。前者はより物理的な感覚で、後者は物理的かつ精神的な、両方の感覚がある。その感覚が何なのか、まだ理解ができない。
「試しに、ちー君のして欲しいことを言ってご覧」
 心地いいテノールの声。大きな手のひら。男らしい目鼻立ち。……父親という年齢ではないけれど、頼りになる近所のお兄さんのような、そういう空気を纏っている。この人に話してみたら、叶えてくれるのでは? そう思わせてくれるだけの、人間としての魅力がある人だと思う。
「自分がどういう事をしたいのかまだよく分かってないんです。食材みたいに……っていうのが、一番近いと思うんですけど……」
 スープになって溶けたいかもしれません、なんてまだ言えない。皮膚を千切る。爪を削る。テーブルの下で痛みを確かめる。自分にはまだ余分なものが付いている。振り払いたくなるような気持ち悪さが、まとわりついている。
「なら、リオちゃんと相性が良いんじゃない?」
「相性?」
「セックスの相性」
 思考が停止する。
 あの子と!? と戸惑う。そりゃそうだ。自分の性癖というか、被食願望の話をしていたつもりなのに、そういう話に切り替わっているのだから。
「でも、似たような興奮があるんでしょ? 若いんだしものは試しだよ」
 いい大人が君たちに手をだすと、犯罪になっちゃうからね! と、どこまで本気かわからないようなセリフを言われた。慌てて否定しようとしたけれど、自分の唾液が気管に入って激しく咳き込んだ。
 不意に階段を降りてくる足音が聞こえてくる。
「こんにちは〜、マスター」
 噂をすれば何とやら。ちょっとした時間差でリオちゃんが入ってきた。白いセーラー服に、金色の刺繍が入っている。どこの高校だろうなと思いながら話しかけようとした。
「リオちゃん、ちー君とはまだだよね?」
「はい、被食側って聞いていたし」
 マスターが先にリオちゃんへ話しかけてしまって、完全に俺は出遅れた。
「色々試してみたほうが良いともうんだよね」
「ちー君が良いなら全然良いですよ!」
「嘘でしょ!?」
 そんな軽くセックスってするものなの!? ほぼ絶叫みたいな驚愕だった。マスターはごゆっくり、みたいに手を振ってキッチンへ引っ込んでいった。
「ちー君、こっち」
 手招きされるまま付いていくと、仮眠室のような部屋があった。市松模様の床に、赤い壁。ロックっぽいテイストでお店とは少し違う趣味だなと思った。机の上には書類が積まれてあり、黒いソファーにはタオルケットがくしゃくしゃになって置かれている。事務所っぽくもあり、生活感もあり……色々な人が使っているような気配を感じる。きちんと掃除はされているものの使い込まれ雰囲気があった。
「はー、今日も暑いね~」
 彼女は呑気にそう言いながら、汗拭きシートで首周りをふきとってゴミ箱へと捨てる。慣れた感じに見えて、俺は入り口で固まったままになった。俺の様子に気がついたのか、クスクスと笑いながら俺の手を引いてベッドに座った。
「ちょっと話そ?」
「は、はい……」
 リオちゃんのほうを見られない。自分の安っぽいスニーカーだけが目に入る。ちらりと彼女の足元を見ると、白ソックスは三つ折りで、ローファーはつやつやに輝いていた。
「ちー君は、食材みたいに食べられたいって言ってたよね?」
「えっと、……はい。でも、自分でもその辺はまだ、よく分かってなくて……」
 しどろもどろになりながらの返答になった。クーラーが効いているはずなのに汗が止まらない。さっきまで飲んでいたレモン水が全部汗に変換されていってしまう。
「私もね、色々試しているところなんだ」
 明るい声で話してくれる彼女に対し、謎の申し訳なさが募る。こんな陰キャのセックス相手ってどういう罰ゲーム。同じ趣味を持つ仲間として接してもらっているありがたさと、数がいないばっかりに俺みたいな非モテと可能性を探ろうとするって、どういう行動力なんだろう。
「食べられるっていうのってさ、すっごい求められているって感じしない?」
 集中できず、言葉が脳を通らず滑るだけだったが、その一言だけはクリアに聞こえた。
 求められている感覚……。宇深との行為は全部、俺の同意なく始まっていることがほとんどだったのに、止められなかったのは根底に優越感があったからかもしれない……。
「それは……はい。よく分かります」
 やっと顔を上げられた。リオちゃんの長い髪がかすかに揺れて、一瞬星空みたいにきらめいた。サラッとした髪が、天使の輪みたいな光を反射していて、目を奪われる。綺麗にしているなと思ってから少し遅れて、シャンプーのいい香りがした。
「食べる側に回ったことある?」
「いえ、無いです……」
 そう素直に言うと、リオちゃんは柔らかく笑って俺のおでこにキスをした。ふにっとした柔らかい感触に、照れくさいような、恥ずかしいような気持ちで一杯になる。
「ちー君」
 桜色した唇が、俺を呼んでいる。この人のこと、ほとんど知らないのに。
「本当に、いいんですか……?」
「もう。敬語もやめよ?」
「あの、リオちゃん」
「ちゃん付けも無し!」
 自分の唇に、ふわりと重なる。可愛らしいリップ音がして、甘い空気で鼻の奥が重たくなっていく。彼女の浅い息遣いが間近にあって、心臓が跳ね回った。よくある男女の行為で、リードするのは男性だというのは分かっているけれど、そんな余裕は全くない。
 ……そういえば、ファーストキスは宇深だったんだ。セックスは……童貞より先に処女をなくしてたんだ。頭の隅で、今更強い違和感となって現れてくる。あまり深く考えたくなくて、目の前の唇を追う。ものすごく柔らかい。乾燥なんかしてなくて、ふっくらとした肉厚な花びらに触れているみたいだった。
 夏服から覗く、白い肌の柔らかそうな質感に吸い寄せられる。生唾を飲み込む音が、彼女に聞こえやしないか。エロいことを考えて目が血走っているんじゃないか。自分の挙動に不安しか無い。
「今日はパーカーなんだね」
 はい、ばんざーい! と言われ、勢いにつられて両手を上げると、恐ろしい手早さで脱がされた。そうなるとは思っていなくて、悲鳴みたいな声を上げる。
 慌てている間に、自分の服ではないものが床に落ちる音がした。高級そうな白いセーラー服が、くしゃっとしている様はショートケーキにフォークが入って不安定に崩れていったみたいだ。彼女は水色のブラジャーとパンツ姿で……柔らかそうな素材に白いレースが付いていた。白い肌によく馴染んでいて眩しい。本格的に目のやり場に困ってしまった。
「夏だけど、ちょっと肌寒くなっちゃうよね」
 照れくさそうで、いじらしくて、でも前向きそうに見えて……彼女の笑顔は本当に魅力的だ。この笑顔を向けられて、嫌な気持ちになる男なんていない。少しずつ距離を詰めるようにして、彼女は俺に擦り寄ってくる。人懐っこい猫みたいな振る舞いで、するすると触れる肌が気持ちいい。
 腕を触り、肩に手をやり、脇腹や背中に手を回して……恐る恐る、弾力のある乳房に触れる。
 マシュマロみたい、というのは本当だった。柔らかくて、さらさらで、いい匂いがして……。あまりの情報量にくらくらしてくる。俺のぼろぼろの指先で触ってはならないと思ってしまうくらい、まっさらな肌だった。
「あの……。俺の指、引っかかったりしない?」
「全然。気にならないよ」
 指の腹まで剥いた指もある。刺々しくなっているところもあるはずだ。けれど、彼女はすごく愛おしそうな仕草で、俺の手に自身の手を重ねる。桜色した形の良い爪は、俺とは正反対だ。文字通り、頭の天辺から爪の先まで手入れが行き届いており、見窄らしい俺が触って良いものではない気がしてきてしまう。
「あのさ、やっぱり……」
「もしかしてさ」
 初めて?
 遮るように、小声で囁かれる。俺は中から焦げるんじゃないかってくらい赤面した。返事を全身でしているも同然だったが、彼女はからかうことなく、いたずらっぽく笑うだけだった。
「じゃあ、ゆっくりやっていこ?」
 のあちゃんが自由にやって、リオちゃんがお姉さんぽく振る舞う。それはのあちゃんが自由人だからそうなってるんだと思っていた。けれど、多分、リオちゃん自身の癖なのかもしれない。相手に合わせてしてほしいことをするのが、上手いんだ。
 ベッドに押し倒されるようにして寝転ぶ。二人でだと少し狭くて、密着しなければ落ちてしまいそうだ。肌と肌で触れ合いながら、啄むようなキスをする。緊張してがちがちだったが、段々と息継ぎが出来るようになってきた。ぺろ、と彼女の唇を舐めてみる。
「リオ、……」
「うん」
 舌を突き出して、彼女の舌先に触れ合う。遠慮がちだった触れ合いが、沼にハマるように濃く、密接なものになっていくのに時間はかからなかった。ゆっくり進めてくれていたはずなのに、俺はどんどん止まらなくなっていく。リオが自分からラッピングを丁寧に外していく。顕になった乳頭を口に含むと、わずかに甘く感じた。
「ちー……。かわいいね」
 頭を撫でられながら、おっぱいに吸い付いているなんて赤ちゃん返りしているみたいでみっともないはずなのに。安心する上に、妙な気持ちになって歯止めがかからない。舌全体で胸の粒を覆ったり舌先でこねたりしていると、リオの身体がぴくぴくと跳ねる。上から掛かる長い髪が、柔らかいカーテンみたいだった。
「ふふ……。美味しい?」
「う、ん……」
 これも、食べるってことになるんだろうか。リオの身体はどこもかしこも、ぴかぴかの新品みたいに無垢で、傷なんて一つもないんじゃないかと思えてくる。そこに牙を立てたらどうなるんだろう。誰も足を踏み入れてない雪原みたいで、きっと誰もが夢中になる身体だと思う。
「ナカにインナーボール入れてるんだよね」
 インナーボール? 耳慣れない言葉に、彼女の下半身へ目をやる。彼女は自分でパンツを脱いでいくと、脚の間から、やたらと明るいピンク色の物体が出ているのが見えた。輪っかが付いていて……彼女はそれをぐいっと引っ張ると、膨れたどんぐりみたいな形をしたボールが出てきた。シリコン製のものらしく、彼女の愛液で白っぽく濡れていた。
「だから、すぐに挿れられるよ」
 清楚そうな彼女から、性の匂いが急に濃く漂い始めた。派手な色をした器具を使っている……という事実が彼女との印象からかけ離れていて、とんでもなく目の毒だった。鼻や口の奥に残るような、甘ったるい匂いに思考力が鈍くなっていく。リオは俺の上にまたがって、俺の芯を擦り付け始めた。過敏になった鈴口からは、先走りの汁が溢れて、彼女との摩擦を限りなく減らしていく。
「ちー?」
 このままだと、生で入っちゃうよ?
 囁かれた言葉を理解する前に、そして何かを判断する間も無く、つぷんと水風船の中へ入っていくような感覚だった。
「あっ……! ぁンッ」
「ッ……あ、ああ!」
 リオの真ん中へ、肉の壁を押しのけて侵入していく。滑りが助けになって、ほとんど苦労なく収まっていった。吸い付くような中の動きに、俺は息をつまらせる。
「は、はぁっ」
 ぎゅ、ぎゅ、と締め付けてきて、どんどん俺の形にぴったりになっていく。堪らないくらいの快楽に浸されて、意味をなさない言葉が口からだらしなく溢れていった。
「んっ、あぁん! 見て、ちい。見てっ……!」
 リオが脚を大きく開いて、ゆっくり上半身をねじる。腰がくねって、中でうねって、まるで蛇が飲み込んでいく途中を体感しているみたいだった。長くてきれいな黒髪が、鞭みたいにしなやかに揺れている。
「えへへ……。ここで、ちーのが食べられてるよ。ほらっ……」
 快楽を感じる神経がむき出しになったみたいに、高まっていく。大胆な動きで何回も奥の方へと導いて、ゆっくりと引き抜いていく。煽情的な表情と卑猥な匂いに、頭の中がリオとのセックスでいっぱいになっていく。
「あ、ああぁ! やめて、そんな、動かさないでぇ……!」
「ふふっ……。私のこと、食べれそう?」
 そう言いながら反応を探って、当たる位置を少しずつ変えてくる。目敏く俺の弱い所を見つけると、クチュクチュと速度を上げて執拗に責め立ててきた。
  紅潮した頬から漏れる息は、わざとらしいくらいに熱かった。溶けそうなくらい目を潤ませて、情欲を隠そうともせず、俺の雄を蹂躙していく。
「ほらっ……! よく見てっ! ここで、ムニュムニュしちゃってるんだよ」
「う、うあぁ……!」
 じゅぷ、じゅぽ、と淫らな水音が室内に響く。俺の上で弾むリオは楽しそうに笑って、下の口で舐る様を知らしめるように腰を打ち付けた。内壁に何度も擦られて、腰の奥から充填されたものがせり上がってくる。
 頭の奥で糸が焼ききれた。もう全く、我慢がきかない。リオをひっくり返して組み敷くと、更に奥まで挿さる。
「ッン! あぁ……!」
 奥を抉るように穿つと、更にもう一つ、奥に突き刺さった感覚があった。リオは甲高い声で啼いて、その響きに掻き立てられる。熟れたイチゴみたいな舌が覗いていたので、むしゃぶりついた。
「リオ、かわいい、リオ……!」
 リズミカルに腰を打ち付ける。柔らかくて、温かくて、とにかく夢中になる。こんな風に気持ちいいなんて、知らない。自慰なんかよりもずっと良くて、目の前の身体だけが、俺の見ている世界になる。

 食い喰われるのが良い、というのはこう言うことかと思う。強い快楽が津波みたいに襲いかかってきて、全速力で駆け抜けていった。